症例基準,改正症例基準全文

K.Fukuda, E.Stephen, I.Hickie, M.C.Sharpe, J.G.Dobbins, A.L.Komaroff, and 国際慢性疲労症候群研究グループ

Mail Magazine ME/CFS Information, No.23-No.26, 2002.3.20-2002.4.24

Case Definition, Complete Text of Revised Case Definition
Annals of Internal Medicine, 121(1994)pp.953-959.
http://www.cfids.org/about-cfids/case-definition.asp



○Co-Cure-Japanから
原文には、図面が挿入されていますが、ここでは省略いたしました。上記アドレスの原文をご参照ください。




目次
・概要
・背景
・長期疲労と慢性疲労の定義と臨床評価
・主要分類項目:慢性疲労症候群、特発性慢性疲労
・主要分類項目のサブグループ化、階層化
・考察
・参考文献
・付録




慢性疲労症候群:その定義と研究への包括的アプローチ

Keiji Fukuda, M.D., M.P.H., Stephen E., Straus, M.D., Ian Hickie, M.D., F.R.A.N.Z.C.P., Michael C. Sharpe, M.R.C.P., M.R.C. Psych., James G. Dobbins, Ph.D., Anthony L. Komaroff, M.D., F.A.C.P., and 国際慢性疲労症候群研究グループ

ウイルス・リケッチア症部、国立感染症センター、疾病管理予防センター(ジョージア州アトランタ)、臨床検査研究所、微生物学・感染症部、アレルギー・感染症研究所、国立衛生研究所(メリーランド州ベテスダ);精神医学校、プリンスヘンリー病院、ニューサウスウェールズ大学(オーストラリア、シドニー);オックスフォード大学、精神医学科、ウォーンフォード病院(オックスフォード、イギリス);一般医療部、ブリガム婦人病院、ハーバード大学(マサチューセッツ州ボストン)





●概要

慢性疲労症候群に関する研究は、疾患の複雑さと方法論的問題が伴っており、慢性疲労症候群や疲労性疾患を持つ方々の評価、分類、研究のための包括的、系統的、統合的な取り組みが必要性とされています。我々は、慢性疲労症候群研究のための基本概念とガイドラインを作成しました。このガイドラインでは、原因不明の疲労を訴える方々の臨床上/研究上の評価手法、慢性疲労症候群の改定症例基準、慢性疲労症候群とその他の慢性疲労を呈する原因不明の症例の分類手法の提案をおこないました。





●背景

慢性疲労症候群は臨床的に定義される疾患(1-4)であり、激しい疲労感、自覚できるほどの集中力・短期記憶力の低下、睡眠障害、筋骨格系の痛みなどの症状群により特徴づけられるものです。慢性疲労症候群の診断は、慢性的な疲労を生じさせるその他の医学的、精神医学的原因を除外した後にのみ、行なわれる。この疾患に対しては、研究で明らかとなっている特徴的症状や臨床検査法は無く(5-7)、また根治治療法も存在しません(8)。最近の長期に亘る研究では、次第に症状が改善して行く方もいますが、大部分の方で何年にも亘って機能障害が続くことが示唆されています(9,10)。


○慢性疲労症候群研究の課題

慢性疲労症候群研究の主要課題は、多くの異なる症例の間には衰弱させるが特有の症状が見られないという共通点があるが、慢性疲労症候群とそのサブグループは、それ以外の症例と病理学的に異なっているのかどうかという点です。この問題を解決するには、臨床的、疫学的、病態生理学的に慢性疲労症候群とその他の疾患との違いを明確にできるかどうかにかかっています。

特に重要なのは、慢性疲労症候群と神経精神症候群の関係を明らかにすることです。後者の疾患は、慢性疲労症候群の研究において、混乱を招く大きな原因となりえます。身体表現性障害、不安障害、うつ病、その他、症状から定義される症候群には、深刻な疲労、複数の身体的・心理的症状が見られます。そして、慢性疲労(11-13)や慢性疲労症候群(14,15)患者は、一般に比べて高頻度で、それらの疾患であるとの診断がされています。

慢性疲労症候群は、多くの疾患に共通する慢性疲労と活動の停滞からくる体調不良(16、17)の部分集合であり、その中で慢性疲労症候群の範囲を定める必要があると考えられます。


○慢性疲労症候群研究の基本概念

アメリカでは、一般成人の24%が2週間またはそれ以上続く疲労を経験しており、そのうちの59%〜64%は原因が判っていません(18,19)。ある報告では一般診療所における患者の24%は、長期疲労を経験しており(1ヶ月)(20)、また、長期疲労を抱える患者の多くで疲労が6ヶ月以上も続いています(慢性疲労と定義される)(21,22)。

我々は、慢性疲労症候群関連の研究のための概念の枠組み(下記図1、注:原文を参照してください)を提案しています。この枠組みの中で、慢性疲労症候群は長期疲労(1ヶ月)のサブグループと考えられ、長期疲労/慢性疲労で定義される患者群の疫学的研究から、慢性疲労症候群と関連する、疾患パターンの調査が可能となります。

また、慢性疲労症候群のクライテリアに基づくケース・コントロールやコホートによる研究と異なり、これらの研究からは、必要とされている臨床背景や研究背景に関する知見を得ることができます。さらに、この枠組みは、慢性疲労症候群の患者群とその他のケース・コントロールやコホートによる研究における患者群との比較が必要であることを示しています。比較の対象として最も重要な患者群は、関連疾患の患者群、長期疲労を持つ患者群、慢性疲労症候群の定義に当てはまらないが慢性疲労を持つ患者群であり、慢性疲労症候群の特徴を明らかにするためには、健康群から抽出されたコントロールでは不十分なのです。


○慢性疲労症候群のクライテリア改訂の必要性

慢性疲労症候群の研究は、大きく異なる方法で診断や選択が行われている場合があり、そのため慢性疲労症候群に関連する種々の研究結果の解釈が困難になっています(23)。

例えば、北アメリカ慢性疲労症候群症例基準(1)は、適切に用いられていません(24)。このクライテリア中のいくつかの項目は、その解釈や比較が難しく(25)、また精神病歴を持つ慢性疲労症例の分類に関して方針が異なっているなどの理由から、臨床において、しばしばこの症例基準には修正が加えられています(26,27)。

また、現在の慢性疲労症候群のクライテリアでは、症例を明確なグループに分類することができません(28, M.Reyesら、未発表)。例えば、疾病予防管理センター(CDC)慢性疲労症候群監視システム(29)に登録されている慢性疲労症候群症例基準を満たす方々は、(我々が仮に定めたカテゴリーへの分類に用いたクライテリアを除いて[M.Reyesら、未発表])定義を満たさない方々の人口特性、症状、他の病気の徴候と大きな差は見られません。以上のことから、研究結果を相互比較するためには、より同一性の高い研究症例サブグループや階層をさらに設ける必要があることを示しています。


○臨床評価基準の必要性

疲労を訴える方々は、不十分または過度の医療評価を受けている場合が多いと考えられます。CDC慢性疲労症候群監視システムの登録者全員が登録以前に医師による臨床評価を受けていましたが、その内の18%の方々が慢性疲労を生じさせると考えられる疾患に登録前から罹患していました(M.Reyesら、未発表)。これらは、登録時に採血された血液を一連の一般的な血液検査にかける、またはこれまでの診療記録を見直すことにより特定されたものです。

我々は、慢性的な疲労を訴えている方々に対して、慢性疲労症候群の診断にあたって、検査が不適切である場合があると考えています。そして、そのようなことが無いようにしなければなりません。


○包括的、総合的アプローチの必要性

慢性疲労症候群は複雑な疾患であり、それを理解するにはいくつもの障害があることから、慢性疲労症候群とその関連疾患に関する研究への包括的、総合的アプローチが望まれています。下記の図2(訳者注:メルマガ22号参照)に示されているガイドラインは、それらの取り組みを促進することを目的としているものです。





●長期疲労と慢性疲労の定義と臨床評価

長期疲労は1ヶ月以上の自覚する疲労感として定義され、慢性疲労は6ヶ月以上の連続的/断続的に続く自覚する疲労感として定義される。

長期疲労/慢性疲労の診断には、その背後に治療が必要な疾患が存在しているか、または影響を与えていないかを見極めるための臨床評価が必要であり、その評価が行われていない時点では、慢性疲労の診断や分類をしてはならない。また、臨床評価には下記項目が含まれていなければなりません。

これまでの履歴:
疲労感が始まったころの医療状況と精神状況、うつ病やそのほかの精神疾患、医学的に説明できない症状の経験、アルコール中毒や薬物中毒、現在処方されている薬剤、一般薬局で購入している薬剤、補助食品。

精神状態検査:
気分、知的機能、記憶、性格などの障害を特定するための精神状態検査。罹患中のうつ病や不安症の症状、自己破壊思考、精神運動抑制の徴候については、特に注意する必要があります。また、精神障害や神経障害の根拠として、適切な精神学的、心理学的、神経学的な評価がなされている必要があります。

身体検査

最小限のスクリーニング検査:
白血球分離を含む完全血球算定、赤血球沈降速度、血清レベル(アラニン・アミノトランスフェラーゼ、総タンパク、アルブミン、グロブリン、アルカリフォスファターゼ、カルシウム、りん、グルコース、血中尿素窒素、電解質、クレアチニン)、甲状腺刺激ホルモン測定、尿検査。


全ての患者に対して画一的なスクリーニング検査を行うことは意味がありません(20、30)。しかし、多発性硬化症の診断を除外する、または追認するなどのために、各々の患者によって、さらなる検査が必要となるでしょう。その場合、追加する検査や処置は、一般的な臨床基準にしたがって行われなければなりません。

(他の疾患の可能性を除外するためではなく)慢性疲労症候群の診断のための検査は、プロトコル研究においてのみ行われるべきで、それらの検査が診断や処方が目的ではなく研究のためであることを、患者に説明しなければなりません。



ラボテストや神経画像の解析といった検査を含めて、臨床において慢性疲労症候群の診断を行うという特定の目的のための検査は勧められません。検査は、他の病因の可能性を調べ、除外するために行われるべきものです。

慢性疲労症候群を除外するための特定の検査法の例として以下のものがあります。血清検査(エプスタイン・バー・ウイルス、レトロウイルス、ヒトヘルペス・ウイルス6型、エンテロウイルス、カンジダ・アルビカンス等)、細胞種と機能に関する研究を含む免疫機能検査、頭部の磁気共鳴機能画像法や放射性核種スキャンなどのイメージング検査(シングルフォトン断層撮影法やポジトロン断層撮影法等)。



○慢性疲労の原因となる病態

以下に当てはまる場合には、原因不明の慢性疲労との診断から除外する。

未治療の甲状腺機能低下症、睡眠無呼吸やナルコレプシー、薬の副作用などの医原性の症状など慢性疲労(31)の原因となりうる症状。

慢性疲労を生じさせる恐れがある疾患の診断を受けたことがあり、臨床上の不審点が残り完治が確認されてない場合。悪性腫瘍の治療経験がある場合、B型/C型肝炎ウイルス感染が完治していない場合などが当てはまる。

次の診断を受けたことがある、または現在受けている場合:精神的異常または気分の落ち込みを伴う鬱病、双極性感情障害、全てのサブタイプを含む統合失調症、全てのサブタイプを含む妄想性障害、全てのサブタイプを含む痴呆性障害、神経性食欲不振症、神経性過食症。

慢性疲労が始まる2年前から発症以後にアルコール中毒や薬物中毒の経験がある場合。

ボディマスインデックス[体重(kg)/(2*身長(m))]が45以上となる過度の肥満(32、33)。

除外疾患を強く示唆する、原因不明の身体所見、ラボテストやイメージング検査での異常は、その後の分類前に原因の特定を行う。



○慢性疲労を十分に説明できない病態

以下に当てはまる場合には、原因不明の慢性疲労との診断から除外しない。

検査では確認できない症状によって定義される病態:線維筋痛症、不安障害、身体表現性障害、非精神病性または非鬱病性の憂鬱、神経衰弱症、多種化学物質過敏症。

適切な治療法が知られており、その疾患による全ての症状を緩快させるのに十分な治療が行われている全ての疾患。平常時の甲状腺刺激ホルモンレベルから甲状腺ホルモン剤が適切であることが確認されている甲状腺機能低下症、または肺機能検査やその他の検査により適切な治療が行われている喘息。

慢性的な後遺症の発生以前に根治治療が行われたライム病、梅毒等の疾患。

原因不明の身体所見、除外疾患の存在を強く示していない検査結果またはイメージング検査における異常。その他の臨床上、検査上の問題が無く、散在型膠原病の診断を強く支持するには不十分な抗核抗体価上昇。





●主要分類項目:慢性疲労症候群と特発性慢性疲労

臨床上の原因不明の慢性疲労症例は、下記クライテリアにより慢性疲労症候群と特発性慢性疲労に分類されます。

慢性疲労症候群は、以下の項目により定義されます。

1)臨床上の原因不明の継続的/断続的に生じている慢性疲労。新しい、または明確な発症の起点を持ち(生まれつきのものではない)、継続中の運動によらない、休息により回復しない、以前の仕事上、教育上、社会上、個人の活動レベルを大きく低下させるもの。

2)次の症状のうち4項目以上当てはまる場合。それらは全て6ヶ月以上、継続的/断続的に続いているもの。それらは疲労感に先立って生じている必要はない。

仕事上、教育上、社会上、個人の活動レベルを大きく低下させる深刻な原因となっている自覚できる短期記憶力や集中力の低下
のどの痛み
わきの下/頸部のリンパ節の腫れ
筋肉痛
腫れや赤みを伴わない移動性の関節痛
新しい形、パターン、強さの頭痛
回復しない睡眠
24時間以上続く活動後の倦怠感

上記の症状やその他の症状の存在を確定するための評価手法を特定しておく必要がある(例えば、担当者が事前にチェックリストを作成しておく、または研究者による報告など)。

特発性慢性疲労症例は、慢性疲労症候群のクライテリアを満たさない臨床上の原因不明の慢性疲労として定義され、クライテリアから外れた理由を明記しておかなければなりません。





●主要分類項目のサブグループ化と階層化

正式な研究においては、解析を行う前に慢性疲労症候群と特発性慢性疲労症例のサブグループ化を行う、または解析の途中で主要項目の有無による階層化を行わなければなりません。これらは、全ての研究で同様に行われなければなりません。その後、付加項目による、特定の研究目的のためのサブグループ化を行うことができます。


○主要サブグループ項目

(1)慢性疲労の原因ではないが、共存する臨床上重要な医学的、または精神神経学的疾患。精神神経学的疾患の発症時期、その有無や分類は、公表されているもの、または自由に利用可能なものを用いて行われるべきです(34)。例えば、The Composite International Diagnostic Instrument、アメリカ国立精神衛生研究所の診断問診手順(The National Institute of Mental Health Diagnostic Interview Schedule)(35)、DSM-III(R)の臨床問診(The Structured Clinical Interview for DSM-III(R))(36)などです。

(2)主観的評価またはパーフォーマンス・ステイタスを含む現在の疲労レベル。これらのレベルの測定には、公表されているもの、または広く利用できるものを用いて行われるべきです。例えば、Schwartzら(37)、Piperら (38)、Kruppら(39)、Chalderら(40)、Vercoulenら(41)によるものなどです。

(3)発症からの期間

Medical Outcomes Study Short Form 36(42)やthe Sickness Impact Profile(43)など、公表されている、または幅広く利用できるものにより評価される現在の全機能能力レベル。



○その他のサブグループ項目

追加項目例:

(1)研究者が注目している特定の点に関する疫学上または研究上の項目。例えば、疲労性疾患の発症における感染症、急性疾患の経験、特定の免疫マーカーの存在やそのレベルなどの研究報告(または自己申告履歴)。

(2)トレッドミル試験や運動特性測定などによる身体機能測定。





●考察

これらのガイドラインが適切に用いられるためには、いくつかの点を確認しておく必要があります。第一に、ここで提案された概念枠組みとガイドラインは、慢性疲労症候群とその類似疾患に関するデータ収集についての系統的、包括的アプローチを支援することを目的としています。これらのツールは、基準としての使用を意図したものですが、慢性疲労症候群の改訂症例基準を含め、どの項目も確定したものではありません。これらの研究用ツールは、新しい知見が得られるごとに変わって行くものです。第二に、本ガイドライン中のどの項目も(特に特発性慢性疲労と慢性疲労症候群のサブグループ)、新たな疾患を定めるものではありません。むしろこれらは比較研究のために考案されたものです。最後に、研究成果の報告に際しては、明瞭で詳細な方法論の代わりにこれらのガイドラインを用いるべきではありません。慢性疲労症候群研究において、対象群、選択手法、被験者(コントロールも含む)の評価、症例基準、測定手法などの詳細な情報が不足しているため、研究結果の解釈が大変困難になっています。


臨床評価に関して強調しておかなければならない点があります。原因不明の疲労を訴える方々の臨床評価の第一の目的は、その病因を特定し治療することにあります。これらの評価は、6ヶ月が経過するのを待たずに、可能なときにいつでも行うべきです。臨床評価項目は患者によって異なってくるため、我々の枠組みとガイドラインでは、全ての患者に共通して適用できる臨床評価項目だけを取り上げています。また、疲労を訴える方々の臨床心理評価に関しては、少なくとも精神状態検査を行う必要があると考えています。疲労を訴える方々、全てに対して心理学的評価を行うことは、非常に重要なことですが、困難でもあります。共存疾患、特にうつ病、の治療が慢性疲労症候群の診断を受けたことにより妨げられないようにしなければなりません。


慢性的な疲労の主因となる疾患の多くは、慢性疲労症候群あるいは特発性慢性疲労の診断から除外されます。人間の疾患は多様で幅があることから、我々は、それらの除外疾患のリストを作るのではなく、特定するための指針を提示しました。しかし、重度の肥満など、疲労や関節痛などの原因不明の症状の診断が大変難しくなる場合があり、特定の除外疾患をいくつか定めています。


我々は、実際上の理由から、精神疾患間の区別を行いました。慢性疲労症候群に典型的な症状は、うつ病や精神分裂病などの疾患が背景にある場合にはその解釈が困難になります。さらに重要なことは、このような方々に対しては、それらの慢性精神疾患を中心に治療がなされるべきであるという点です。一方で、不安障害や軽症のうつ病などの他の精神疾患は、除外疾患の対象としていません。それは、これらの精神疾患が慢性疲労/慢性疲労症候群に罹っている方々に非常によく見られるものであり、それらの疾患に罹っている方々を除外することで、疲労性疾患における精神的障害の役割の解明を大きく遅らせることになるでしょう。この点は、今後、解決すべき大変重要な問題です。本ガイドライン中のこの部分は、アメリカ国立衛生研究所の1991年ワークショップ(24)における提案「いくつかの精神症候群の発症後に生じた慢性疲労症例は、慢性疲労症候群に分類することができる」と合致するものです。


この慢性疲労症候群の改正症例基準は、1988年の症例基準(1)を基にしています。今回の改正は、先の症例基準に対する批判(25)に応えること、より系統的なデータ収集を国際的に行えるようにすることを目的としたものです。過去の研究における身体的徴候の報告の信頼性が低いという点で全員の意見が一致していたため、クライテリアから全ての身体的徴候を削除しました。また、多数の症状クライテリアは、1988年の慢性疲労症候群症例基準による症例の均一性を高めるのではなく、制限を課しているだけであるという点においても、全員の合意が得られたことから(M.Reyesら、未発表)、必要な症状の数は8から4に、リスト上の症状の数は11から8へと減らされています。


慢性疲労以外の症状クライテリアを残すかどうかは、我々の中で最も大きく意見が分かれた点でした。この意見の相違は、1988年の慢性疲労症候群の症例基準のように、より限定的アプローチを支持するグループ(いくつかの症状クライテリアを用いる)と、オーストラリア(3)とイギリス(4)の症例基準のように、慢性疲労症候群の定義を広げることを支持する(前者より少ない症状クライテリアを用いる)グループとの間に生じたものです。複数の症状クライテリアを支持するグループは、「明確な病態としての慢性疲労症候群の臨床所見を最も良く反映させるには、複数の症状を取り入れることが最良の手段である」と考えていました。一方でその他の方々は、慢性疲労症候群だけに特徴的な症状が無いこと(28)や多数の症状基準を用いた場合、精神疾患を持つ症例へ偏ってしまうことを示唆する研究報告がある(28, 44)ことを指摘していました。この問題における意見の不一致は、慢性疲労症候群に特有の異常を示し、慢性疲労症候群症例基準の妥当性を確立する必要があることを示しています。


疲労の概念そのものが不明確であることから、疲労の定義づけが問題となりました(45,46)。我々の慢性疲労症候群の概念では、心身の極度の消耗状態で、傾眠や意欲の喪失とは異なり、運動が原因ではなく、診断可能な疾患が原因ではないものを疲労症状としました。また、慢性疲労症候群の初期症例との比較のため、「6ヶ月間続く疲労」という項目は残し、低下レベルの確認が困難であることから、「毎日の活動量の平均がこれまでの50%以下である」という項目は削除しました。


原因不明の慢性的疲労と慢性疲労症候群がどような関係にあるのかを明確にする必要性から、「特発性慢性疲労症候群」を定義しました。


主要分類項目のサブグループ化は、標準化された評価手法による慢性疲労を持つ患者から得られたデータに依存しています。主要項目によるサブグループ化は、核となるデータの収集を促進することになり、追加項目による更なるサブグループ化は、特定の研究目的のための特定のサブグループを定義することができるため、研究に柔軟性を与えることになります。


「慢性疲労症候群」という病名について、ここで最後に触れておきたいと思います。我々も、この病名は、この疾患の軽視につながるのではないかと危惧しています。慢性疲労症候群に伴う障害は決して軽視できるものではありません。しかし、十分に科学的に解明されていない段階での病名変更は、混乱を招き、これまで進んできたこの疾患に対する一般の関心、臨床上の関心を大きく損なうことになると考えられます。そのため、我々は、基礎となる臨床病理学的過程や慢性疲労症候群と慢性疲労に関連する過程についての更なる知見が得られたとき、病名の変更を行うべきであると考えています。





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●付録---そのほかの国際慢性疲労症候群研究グループ委員

National Institutes of Health: Ann Schluederberg, ScD; University of Colorado, Denver, Colorado: James F. Jones, MD; Prince Henry Hospital of New South Wales, Sydney, Australia: Andrew R. Lloyd, MD, FRACP; King's College School of Medicine and Dentistry, London, United Kingdom: Simon Wessely, MRCP, MRC Psych; Polyclinic Medical Center and Penn State College of Medicine, Harrisburg, Pennsylvania: Nelson M. Gantz, MD; Texas A & M University Health Science Center and Scott & White Memorial Hospital, Temple, Texas: Gary P. Holmes, MD; University of Washington Medical Center, Seattle, Washington: Dedra Buchwald, MD; University of Toronto, Toronto, Canada: Susan Abbey, MD, FRCP(C); University of California, San Francisco, California, and Alta Bates Hospital, Berkeley, California: Jonathan Rest, MD; University of California, San Francisco, San Francisco, California: Jay A. Levy, MD; Food and Drug Administration, Rockville, Maryland: Heidi Jolson, MD, MPH; Lake Tahoe Medical Center, Incline Village, Nevada: Daniel L. Peterson, MD; University Hospital Nijmegen, Nijmegen, the Netherlands: Jan H.M.M. Vercoulen, PhD; Centro Regionale di Riferminento Oncologico, Aviano, Italy: Umberto Tirelli, MD; Karolinska Institute at Huddinge University Hospital, Stockholm, Sweden: Birgitta Evengard, MD; New Jersey Medical School, Newark, New Jersey: Benjamin H. Natelson, MD; Division of Viral and Rickettsial Diseases, National Center for Infectious Diseases, Centers for Disease Control and Prevention, Atlanta, Georgia: Lea Steele, Michele Reyes, and William C. Reeves, MD.





●謝辞

The authors thank Carla Arpino, Judy Basso, Lyria Boast, Janet K. Dale, Karen Ezrine, Marya Grambs, K. Kimberly Kenney, Teruo Kitani, David Klonoff, Dorothy Knight,Gerhard R.F. Krueger, Hirohiko Kuratsune, Gudrun Lindh, Lars Lindquist, Lisa Livens, Alison Mawle, David McCluskey, John O'Connor, Orvalene Prewitt, Bonnie Randall, Karen B. Schmaling, Scott Schmid, John Stewart, Lars Wahlstrom, Denis Wakefield, and Andrew Wilson.





●著者の所属

Drs. Fukuda and Dobbins: Mailstop A15, Division of Viral and Rickettsial Diseases, National Center for Infectious Diseases, Centers for Disease Control and Prevention, 1600 Clifton Road, Atlanta, GA 30333. Dr. Straus: Clinical Center Room 11N228, Laboratory of Clinical Investigation, National Institutes of Health, 9000 Rockville Pike, Bethesda, MD 20892. Dr. Hickie: School of Psychiatry and Department of Infectious Diseases and Immunology, Prince Henry Hospital, University of New South Wales, Little Bay, NSW, 2036, Australia. Dr. Sharpe: University of Oxford, Department of Psychiatry, Warneford Hospital, Oxford, OX3 7JX, United Kingdom. Dr. Komaroff: Division of General Medicine, Brigham and Women's Hospital, 75 Francis Street, Boston, MA 02115.


翻訳:Co-Cure-Japan, Jp-Care




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FAX::704/365-9755



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