CFIDSと仕事

Matthew I. Kozinets


Mail Magazine ME/CFS Information, No.9-No.11, 2001.9.30-2001.10.21

CFIDS in the Workplace
http://www.cfids.org/archives/1998/pre-1999-article07.asp




 CFIDSのひどい症状があっても、パートタイムやフルタイムの仕事をすることができる方はたくさんいます。中には仕事に対する能力が全く損なわれていない方もいます。また、1年〜数年の休養や治療の後、職場に復帰される方もいます。  

 働くことは、生きていることを実感することであり、喜びでもあるのに、PWCsは雇用差別を受けやすい状況にあります。現在の社会には、CFIDSに対する根強い恐 怖感や誤解があり、CFIDS患者であるという理由で解雇されたり、採用を拒否されたり、あるいは適切な職場環境が提供されないこともあります。そのため、就職をするにあたっては、雇用差別から自分自身を守る術を知っておくことが必要です。  

 雇用差別から障害者を守る州法や連邦法において障害を持つアメリカ人法(ADA)第1章は重要な意味を持っています。第1章には次の様に書かれています。
「雇用者は、応募手続き、採用、昇進、解雇、報酬、職業訓練、及びその 他の雇用上の規定、条件および特権に関して、障害を理由として、その仕 事を行う能力がある障害者を差別してはならない」(§42 U.S.C. Section 12112(a))

 第1章には、「平等な処遇」と「適切な便宜」という二つの重要な雇用権が示されています。これらの権利は、障害者が職場で平等な処遇が受けられることを約束するもので、偏見によって処遇が制限されること無く、障害を持たない人と同様に仕事や便宜を受けることができるようにするものです。 一定の要件を満たしていれば、障害者はこれらの権利を行使することができます。それは、その仕事を行う能力を持っていること、適切な環境を提供してもらうため、雇用者に障害についての説明を行っていること、差別行為があった場合には米国雇用機会均等委員会(EEOC)に連絡をすることです。これらを満たすことで、PWCは雇用差別から身を守り、職場で平等な処遇を受けることができるようになるでしょう。



○平等な処遇
 
 平等な処遇とは、他の就職希望者や従業員と同じ扱いを受ける権利のことで、障害を持つアメリカ人法に定められているこの権利は、1964年の公民権法第7章が基になっています。第7章では、人種、皮膚の色、宗教、性別、出身の5項目を保障対象としており、それらの違いによる雇用差別を禁じています。例えば、雇用主は、アフリカ系アメリカ人だからという理由で従業員を解雇することはできません。 基本的なこととして、障害を持つアメリカ人法第1章には、この保障対象とされる項目に 「障害者」が加えられています。従って、その仕事を行う能力のあるPWCが就職を希 望している場合、雇用主は、単にCFIDSであるという理由でそれを拒否することはできません。雇用主は、他の就職希望者と同様にPWCも採用対象として考慮しなければいけないのです。



○適切な便宜  

 「平等な処遇」に加え、アメリカ障害者法第1章では「適切な便宜」を保障する権利も定めています。この適切な便宜とは、職場の環境や仕事の手順を調整することを意味しています。例えば、職場に階段があり、車椅子を使っている従業員がそこで働いている場合、スロープを取り付けることは「適切な便宜」となります。この権利は、 職場からバリアを取り除き、障害者が他の従業員と同じ就労環境を得られるようにすることを目的とするものです。仕事を遂行する能力のある障害者が就職を希望者していたり、従業員である場合、その人の持つ既知の肉体的・精神的制約に対する適切な環境が提供されなければ、アメリカ障害者法の雇用差別に抵触することになります。 (合衆国法典§42、12212(b)(5)(A)節)  

 PWCが働くためには、そのような便宜が必要になるでしょう。例えば、CFIDSの症状の程度には不規則な波があり、時間が厳密に決められている日程をこなすことはできないかもしれません。そのような場合、「適切な便宜」としてフレックスタイムを使用することになるかもしれません。フレックスタイムとは、フレキシブルに就労時間を決めることができるもので、PWCは一番体調が良い時間帯やベッドから起きることができる日だけ働けるようになります。

また、CFIDSの症状には長く続く激しい疲労があり、PWCは長時間続けて働くことができないこともあるでしょう。このような場合、適切な便宜として休憩用にマットレスや長いす(カウチ)を要求することができます。また、通勤が激しい疲労の原因となったり、自宅の方が休息のための設備が整っているといった場合には、在宅勤務を要求することができます。 さらに、身体機能の低下、痛み、認知障害などにより、肉体労働や集中力を必要とする作業ができないこともあります。そのようなPWCのための適切な便宜としては、移管できる作業は他のものに移管する、運搬作業が伴う場合には肉体的苦痛の軽減のためスクーターや車椅子を提供する、または肉体的、精神的負担の少ない職種に配置換えするなどが考えられます。 各人にどのようなことがあてはまるかをお知りになりたい場合には、職場環境ネットワークまでお問い合わせください。情報提供にかかる費用は 障害者のための大統領委員会資金で賄われています。

 雇用者はPWCに対して適切な便宜を積極的に提供する義務がありますが、それにより経営に不当な負担がかかる場合にはこの限りではありません。(Id.)「不当な負担」には、重大な障害や支出が挙げられ、それを判断する項目としては、その便宜により生じる負担の大きさ、その財源、それが業務に及ぼす影響などが挙げられます。(§42 U.S.C. Section 12111(10)(B)) 例えば、PWCにフレックスタイム制を認めることで深刻な負担を強いられる場合には適切な便宜と認められないこともあります。フレックスタイム制にすることで、 通常の業務時間外に職場を開けておく必要が生じ、電気代、ガス代、水道代、警備保証費などの経費の増加につながる場合や、他の従業員の勤務時間に影響がでる場合、業務の混乱を招く恐れもあります。このように、適切な便宜を受ける権利は、雇用者ができることと障害者に必要なことのバランスの上に成り立つもの なのです。



○適格者

 障害を持つアメリカ人法は、障害者の雇用の権利を規定する一方で義務も定めています。 第一に障害者は自身が求める仕事に対する適性がなければならず、障害を持つアメリカ人法は、適性がない者に対しては適用されません。適性とは仕事に必要とされる 技能、教育履修および経験を有していることで、適切な便宜を得て、または得ずにその職の主要な職務を行なえる状態のことです。 (§42 U.S.C.Section 12111(8)) PWCは、応募に先立って、自分自身に適性があるかを判断しなければなりません。 自分自身の資格要項を確認し、必要な教育履修、技能及び経験があるか、適切な便宜を得る得ないに係らず、仕事を行なったとき、どの程度、身体的、精神的な制約がその職の主要な職務に影響を及ぼすのかを考えておかなければなりません。

 ここで、主要な職務とは、基本的な職務上の義務、主要な任務を果たすことです。適切な便宜を得る得ないに係らず、その職の主要な職務を行うことができれば適性があるということになり、例えば事務職における主要な職務には、電話を受ける、タイプを打つ、コピーを取るなどが挙げられます。PWCが休憩時間などの適切な便宜を得た上で、これらの職務をこなすことができれば、適性があると認められます。場合によっては、長時間立ったままコピーを取らなければならない、 きついコピー作業もあるでしょう。CFIDSのため長時間立っていることができなくても、そのようなきついコピー作業が単に余分な仕事であって、主要な職務でなければ、適性があると認められることになります。

 適性があるかどうか自分で判断することは難しいかもしれません。その判断を行うには、自分の生活に及ぼすCFIDSの影響について十分に把握することが必要で、そうすることは気が滅入る作業かもしれません。しかし、もし身体的、精神的な 制約を十分に把握せずに自分の能力以上の職に就ついてしまうと、自分の能力の限界を超えてしまい、症状悪化の原因となるでしょう。また、十分な仕事が行えないため、解雇されてしまうかもしれません。どちらの場合においても、障害を持つアメリカ人法では保護対象とはならないことを知っておく必要があります。CFIDS (または他の理由)による身体的、精神的な制約のため、主要な職務を行うことができない場合、雇用者は法律に従って従業員を解雇することができます。 従って、前もって自分の適性を正確に判断することが重要で、そうすることでこ れらの問題を避けることができるでしょう。



○障害の説明

 障害を持つアメリカ人法におけるもう一つの義務は、適切な便宜が必要な場合には雇用 者に障害についての説明をしなければならないということです(もし、何ら便宜が計られなくても仕事を行なえるならばCFIDSやその他の障害について説明する必要はありません)。同法では、雇用者がその必要性を認識していない場合には適切な便宜を図る義務が生じないため、説明を行うことが必要になります。 説明には、そのタイミング、提供する情報の内容、話し合いの進め方など、いくつかの問題点があります。雇用者が採用通知を出し、あなたが実際に働き始める直前が障害と適切な便宜の必要性について雇用者と話し合うのに一番良い時期です。面接の時には、病気について触れるべきではありません。病気を知らせるこ とで、無意識のだとしても採用の決定に影響がでるかもしれません。一般的に雇用者はCFIDSなど病気について偏見や不安を抱くもので、そうでなくとも、病欠が多くなるのではないか、会社の健康保険の負担が多くなるのではないかと懸念するかもしれません。従って、PWCは、採用面接ではCFIDSについて自発的に情報提供するべきではないのです。

 さらに、雇用者は、面接にCFIDSについて質問することはないでしょう。障害を持つアメリカ人法では「事業主は選考のプロセスにおいて採用通知前の段階で、障害の有無を調査してはならない」(§29 C.F.R. Section 1630.13(1))と記されているからです。 従って、雇用者は「あなたは障害者ですか?」または「何か健康上の問題がありますか?」という質問はしないでしょう。しかし、いくつかの調査は認められています「雇用者は、応募者の仕事に関連する能力についての事前調査や応募者に職務を遂行できるかどうか質問することができる」(29 C.F.R. Section 1630.14(a)) 。従って、雇用者は、特定の仕事ができるかどうか、あるいはどのようにそれを行なうことができるのか質問することはあるでしょう。しかし、このような質問は「合法的な事業目的」を達成するための「必要最小限」のものでなければなりません(Id.; 29C.F.R. Section 1630.13(b))。

 以上をまとめると、PWCは面接ではCFIDSについて触れるべきではありません。もし雇用者がその話をした時には、特定の職務に対する最小限の質問であるかどうかを確認してください。そして、もしそれが健康状態についての一般的な質問であれば、答える義務はないのです。     

 雇用者が採用の意向を示した場合、または面接時に障害について合法的な範囲の質問をされた場合、PWCはCFIDSについて説明し、情報を提供する必要があるでしょう。この病気について知らない人が多いため、PWCは雇用者に対してCFIDSとは どのようなものなのか、肉体的、精神的能力がどの程度制限されるのかを雇用主に説明しなければなりません。そのときに、医者からの診断書などの文書を提示するのもよいでしょう。また、仕事を行う上で必要となる適切な便宜について、 詳細に説明しなければなりません。例えば、通常の休憩とは別に休憩が必要ならば、毎時間10分程度、横になって休む必要があると説明しなければなりません。 これらの話し合いは、友好的、協力的かつ積極的な雰囲気で行われなければいけません。また、PWCの側も、CFIDSや障害を持つアメリカ人法に関することなど雇用者側の抱える問題に理解を示すことが重要です。最後に、PWCは、雇用者が適切な便宜を申し出てくるのを待たずに、積極的に要求して行くことが必要です。



○雇用機会均等委員会への連絡

 障害を持つアメリカ人法では、雇用差別を受けた場合、雇用機会均等委員会にそれを報 告することが義務付けられています。同委員会は連邦政府機関の1つで、雇用差別があった場合、それを調査、起訴を行う組織です。雇用者が、CFIDSであるという理由だけで雇用を拒否したり、解雇したり、または適切な便宜が与えられなかった場合には、その従業員は雇用差別を受けていると認められます。PWCは、差別行為のあった日から300日以内に同委員会に”告訴状”を提出しなければなりません。告訴状とは、差別行為の内容とその人物について書かれた文書のことです。例えば、PWCがCFIDSを理由に解雇された場合、そのときの状況を書 いた告訴状を提出しなければなりません。告訴する場合には、コロンビア特別区ワシントンにある雇用機会均等委員会の差 別申立窓口へ連絡し、申立を行ってください(TEL:(800)669-4000)。 各居住地域の連絡先は、電話帳の連邦政府関連一覧より「雇用機会均等委員会」 を照会ください。 訴訟が提起されると、雇用機会均等委員会は調査を行い、雇用者を告訴するか否かを判断します。不起訴となった場合には、個人で起訴するのに必要な訴権状が発行されます。この訴権状がないと、雇用者を告訴することはできません。

 EEOCへの申立に加えて、雇用差別を被ったPWCは、雇用差別禁止法を専門とする弁護士を探さなければなりません。EEOCと連携して告訴をするにあたって、弁護士は貴重な支えとなり、有益な助言をしてくれるでしょう。弁護士費用は様々ですが、勝訴した場合、裁判所は雇用者にPWCの弁護士費用の支払いを命じることもあります(42 U.S.C.Section 2000e-5k)。 州または郡の弁護士協会から雇用差別禁止法専門の弁護士を探すこともできます。例えば、アリゾナ州フェニックスのマリコパ郡弁護士協会では、弁護士紹介サービスを行っており、弁護士による30分間コンサルティングは25ドルになります。また、障害者の権利教育援護基金法人(下記参照)などの公益法団体に連絡してもいいでしょう。本来は、どの雇用者も自発的に障害を持つ応募者や従業員の権利を尊重して行くことが望ましいのですが、法的措置や平等な雇用機会を与えるための裁判所命令が必要となる雇用者もいるのです。



○まとめ

 障害を持つアメリカ人法第1章では、適性のあるPWCは平等な扱いを受け、適切な便宜を受ける権利を規定しています。アメリカ障害者法の必要条件を満足することで、PWCはこれらの権利を主張することができ、そして、仕事で成功を掴むチャンスを得られるようになるでしょう。



○問合せ先

米国雇用機会均等委員会(EEOC)
 アメリカ障害者法第1章に関連する法律相談を行っています。資料のお申し込みは、800/6669-3362、ご相談は800/669-4000まで。雇用者を告訴する場合には800/669-4000か居住地域の米国雇用機会均等委員会まで連絡してください。または、次の住所まで手紙をお送り下さい。 米国雇用機会均等委員会, 1801 L Street NW, Washington, DC 20507

障害者権利教育擁護基金法人(DREDF)
 障害を持つ人々への情報の提供、法定代理人の紹介を行っています。 住所:1633 "Q" NW, Ste. 220, Washington, DC 20009, 電話番号:202/986-0375。 または、住所:2212 Sixth Street, Berkeley, CA 94710, 電話番号:510/644-255、 800/466-4232

職業リハビリテーション局
 連邦政府の出資による機関で、障害を持った人が職場に復帰できるよう援助を行っています。

法律図書館
 法的権利と判例に関する多くの情報があります。法律学校の図書館は、一般に開放されいますし、問合せに応じる図書館員も親身に地域住民の力になってくれます。電話帳の前の州立/郡立の項目を参照してあなたの居住地域にある裁判所の図書館を探してください。



著者:Mat Kozinets
 アリゾナ州立大学法学部聴講生、1992年3月発症。 この記事は、「障害を持つアメリカ人法:障害を持つアメリカ人法によりPWCは雇用差別から守られているのか?」(ホフストラ労働法ジャーナル、1995年、$4.50にてアメリ カCFIDS協会で販売)を元にしたものです。


翻訳:Co-Cure-Japan, Jp-Care






原文:
CFIDS Association of America Home Page
PO Box 220398, Charlotte, NC 28222-0398
FAX::704/365-9755



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