CFSの推定病因

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)

Mail Magazine ME/CFS Information, No.45-No.46, 2002.9.10,2002.9.16

サイト:http://www.cdc.gov/ncidod/diseases/cfs/info.htm#Causes
原題:Possible Causes of CFS
著者:Centers for Disease Control and Prevention



CFSに関して活発に研究が行われていますが、現在のところまだ病因はわかっていません。CFSの単一の病因はまだ特定されていませんし、またその他の可能性として、複数の増悪原因を持つ疾患の発症から、最終的にCFSに至ることも考えられます。したがって、以下に取り上げた病因は、どれも可能性があるものであり、それらが正式に除外されていると考えたり、また、大きく異なっているからといって除外できると考えるべきではありません。CFSの発症につながると考えられるものとしては、ウイルス感染、精神的ショック、ストレス、化学物質などがあげられます。



A.病原体

一つには、症状が慢性的な単核球増加症に似ていることから、当初CFSはウイルス感染によって引き起こされると考えられていました。最も可能性が高いと考えられていたのはエプスタインバーウイルス(EBV)です。現在では、CFSは、EBV等の既知の病原体が単独で引き起こしているものではないことが明らかになっています。ヒト病原性ウイルス感染とCFSの関連はまだ明らかになっていません。

CDCが4市を対象に実施した調査研究によると、EBV、ヒトレトロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、エンテロウイルス、風疹、カンジダ・アルビカンス、さらに最近ではボルナウイルスやマイコプラズマを含む、各種ヒト病原性ウイルスによる感染症と、CFSとの関連は認められませんでした。すなわち、これらの研究結果は、現在確認されているヒト病原性ウイルスの中には、CFSとの因果関係を持つものは無いことを示唆しています。

しかし、CFSには多数の病因が存在し、同じ結果を導いている可能性が残されており、CFSの一部の症例では、ウイルスや他の病原体が重要な役割を持っている可能性もあります。



B.免疫

CFSは、インターロイキン−1などのサイトカインの不適切な産生や、特定の免疫能の変化といった免疫機能障害によって、引き起こされるのではないかという説が発表されています。この説に関して、一つの事実が明らかになっています。それは、CFS患者には、病気に結びつくと考えられるほどの免疫障害が起こっていないのです。

いくつかの研究では、CFS患者の多くで、自己免疫疾患の特徴である抗自己抗体(anti-self antibodies)や免疫複合体が観察されています。しかし、CFS患者には、自己免疫疾患に特有である、関連する組織の損傷はみられませんでした。また、免疫疾患の患者や免疫反応が抑制されている方々にみられる日和見感染症や癌リスクの増加も見られていません。

コントロール群に比べ、CFS患者群ではナチュラルキラー細胞の数の減少や活性が低下しているという数例の報告がありますが、そのほかの多くの研究ではCFS患者群とコントロール群の間に差は見られていません。CFS患者群では、コントロール群に比べ、T細胞活性化マーカーが異なる発現をすることが報告されていますが、この点についても、全ての研究で同じ結果は得られていません。

興味深い仮説の一つとして、ストレスやウイルス感染などの様々な誘因によって、サイトカインが慢性的に発現し、CFSの発症につながるという説があります。数種のサイトカインを治療量投与することにより、疲労が起こることがわかっていますが、CFS患者に特有の慢性的なサイトカイン分泌パターンは現在のところ特定されていません。また、血中サイトカインを高濃度に保つことで臨床改善がみられたという報告もあります。したがって、サイトカインとCFSの因果関係が存在したとしても、その関係は複雑なものでしょう。

最後に、いくつかの研究によって、CFS患者は健康な方々に比べて、アレルギーの病歴を持つ場合が多いことが示されています。アレルギーはCFSの誘因のひとつであると考えられますが、全てのCFS患者にアレルギーの病歴がみられておらず、それが唯一のものであるとは考えられません。



C.視床下部−下垂体−副腎(HPA)系

複数の研究により、CFSにおいて中枢神経系が重要な役割を果たしている可能性があることが示唆されています。CFS患者の発症前の状態として広く報告されている物理的もしくは精神的なストレスは、視床下部−下垂体−副腎系(HPA系)を活性化し、コルチゾール等のホルモンの放出を促進(増加)させます。コルチゾールとコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)もまた、HPA系の活性化時に産生され、免疫系等の多くの体のシステムに影響します。また、これらは、その挙動の面においても影響を与えています。最近の研究により、CFS患者は、健康なコントロール群に比べ、コルチゾールレベルが低下していることが明らかとなっています。

その他の研究においても、CFS患者や、線維筋痛症等のCFSと関連する疾患の方に、類似のホルモン異常がみられています。コルチゾールは、炎症や細胞性免疫の活性化を抑制する作用を持っています。すなわち、コルチゾールレベルの低下は、炎症プロセスや免疫細胞の活性化につながると考えられます。

免疫学データによると、CFSにみられるコルチゾールレベルの変化は、正常と認められる範囲内であり、患者群とコントロール群の平均値を比較することで、初めてその違いを見ることができます。すなわち、コルチゾールレベルをCFS患者の診断マーカーとして用いることはできません。

70名のCFS患者を、コルチゾールレベルを正常に戻すヒドロコルチゾンを毎日投与するグループと、プラセボ薬を投与するグループの二つに無作為に分け、12週間観察するプラセボ比較試験を行ったところ、コルチゾールレベルの低下それ自身は、CFSの症状の直接の原因とはならず、ホルモン補充療法は有効な治療法でないことが結論づけられました。しかし、CFSにおける神経ー内分泌系に関する研究を進めて行くことが、この重要かつほとんど研究が行われていない分野を完全に解明するために必要です。



D.神経調節性低血圧

Roweらは、血圧と脈拍をコントロールしている自律神経の障害(神経調節性低血圧、NMH)がCFS患者にどの程度見られるのかについての研究を行いました。彼らは、CFS患者とNMH患者が重複していると気付きこの可能性に注目しました。

NMHは、傾斜テーブル検査を用いて引き起こすことができます。傾斜テーブル検査とは、患者をテーブルの上に水平に寝かせた後、テーブルを70度の角度まで起こして45分間保ち、その間の血圧と心拍数をモニタリングする方法です。この検査を行うことで、NMHに罹っている方では、血圧の低下が生じ、また、立ちくらみ、視界のかすみ、言語刺激に対する反応の遅滞といった特徴的な症状が現れます。

多くのCFS患者が、長時間立ちつづけた後、もしくは熱いシャワー等の暖かい場所にいる時に、立ちくらみや疲労の悪化を経験しています。これらの状況は、また、NMHを引き起こすことも知られています。

傾斜テーブル検査時の血圧の低下は、健康な方々では29%であったのに対し、CFSと臨床診断を受けた成人では96%であったという研究報告があります。また、傾斜テーブル検査によっても、CFSに特徴的な症状が引き起こされることが知られています。

NMHの治療に効果のある薬がCFS患者にも効果があるか、研究(プラセボ比較試験ではない)が行われました。一部のCFS患者で症状の著しい改善が見られましたが、すべての患者に効果が見られたわけではありませんでした。現在、CFS患者を対象とした、NMH治療薬のプラセボ比較試験が進行中です。



F.栄養不足

CFSが栄養不足によって引き起こされるという科学的証拠は、発表されていません。多くの患者が、アルコールや人口甘味料アスパルテーム等の、食品や市販薬に含まれる特定の物質に対する不耐性を強く訴えています。

CFS患者における栄養不足に関する証拠は、今のところ不足していますが、ここで触れておかなければならないことがあります。それは、一般的に、バランスのとれた食事は健康状態の改善につながり、あらゆる慢性疾患に有効であるという点です。



翻訳:Co-Cure-Japan, M.K.




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